父と母が暮らした場所

父が他界して五年が過ぎました。自宅を火事で失ってから二十数年間を地元の老人ホームで母と共に暮らしておりました。入居したのは父が七十四歳、母が六十九歳の時と記憶しています。思いもよらない出来事でこのホームが終の棲家となった訳です。病気がちの母は入退院を繰り返し、父が亡くなる前の一年位はずっと入院しておりました。母の回復だけを願っていた父でしたのに、秋のある日あっけなく旅立っていきました。二人が暮らしていた部屋は六畳程の二部屋でした。火事に見舞われ家財の大方は焼失し、最低限の持ち物からスタートしたホーム暮らしでしたが、整理してみると流石に長い年月を感じさせる量の遺品でした。倖い私は車で二時間程の所に住んでおりましたので、明け渡すまで何日間かの猶予を頂き、夫と共に遺品整理をする事にしました。

遺品の整理

大型のタンス等は同じホームの方が引き受けて下さいましたし、他は思い切って処分する事にしました。判断の付かない物は後で時間をかけてと車に積み込みました。こうして三日間かけた遺品整理は湿っぽさの欠片も無く無事に終える事が出来ました。我が家に戻る際、サヨナラと空っぽになった部屋に向かって声を掛けた時、不覚にも涙が溢れ出ました。日当たりの良い部屋のいつもの場所で「ご苦労さん」と笑いかける父を見たような気がしたからです。